2015年4月22日水曜日

リビングルーム北本団地、閉店。


北本団地に「リビングルーム」が誕生してから丸5年が経ちました。開店当初、何とも言えない異質物として現れた「リビングルーム」は、この間にその不思議さを内包しつつも団地の「生活景」となっていきました。このブログで書き記せていることは少ないかもしれませんが、「リビングルーム」という不思議な「居間」で本当にたくさんの出来事が生まれました。そのどれも、5年前にはじめた時には想像し得なかったことだらけです。

空き店舗、家具、交換というシンプルな要素で、予測し得ない「居間」をつくる、というのは、今思えば何とも野心的に感じてしまいます。何かの目標に向かうわけでもなく、わかりやすい創作的な関わりが用意されているわけでもない。答えがない。問い。その場にいる一人ひとりがそこでどう問いに応答するか、その積み重なり。全くの無視から子どもの楽園化まで、消極的積極的どちらの反応も極端に受け入れて、そのままに変化していく。「リビングルーム」は一見分かりづらいですが、素晴らしく時に厳しく「ゆらぎ」つづけました。まさに、その予測不可な「ゆらぎ」を目的としたかった発案当初、「生きている部屋=Living Room」と読み替えてみたことが命名の決め手となりました。

《リビングルーム北本団地》にいる時、いつも「何をすべきか/どう過ごすか」と考えていた気がします。私も「リビングルーム」に揺さぶられるうちの1人でした。時が経つにつれ、そんな「ゆらぎ」を共にする「店員」のメンバーと出会っていきました。活動序盤は絶え間ない交換や子どもたちによって変化しつづけていたのに対し、中盤からは店員同士の対話が「リビングルーム」を変化させていったように思います。普通の会話のようでありながら、私にとってそれは特別な対話でした。

ここ一年は、《リビングルーム北本団地》の継続について常に対話を繰り返してきました。運営のサポーター制度化や、引っ越し&リニューアルなど、アイディアは絶えません。一方でここで得たことを糧に新たな実践をしてみたい、改めて自分の日常に立ち返っていきたい、など、「リビングルーム」を維持すること自体への意味を見出させなくなってもいきました。店員一同で更に更に対話を重ねた結果、急な報告ではありますが、《リビングルーム北本団地》の活動を終了することに決めました。5年に渡って地道に続いてきたこの現場がなくなる切なさを感じつつ、これもまた「変化」だと考えていきたいと思います。店員のメンバーは、「リビングルーム」を自分たちで発展させた新たな活動をすでに計画しはじめています。見えやすい活動でなくたっていい。1人ひとりの新しい日常づくりを出来るかぎり応援していきたいと思います。

2015年4月27日(月)から4月29日(水/祝)の3日間で、きれいに片付けをしつつ、《リビングルーム北本団地》を閉店します。最後にもう一度、という方がいましたら、Facebookのページにご連絡いただければと思います。

改めて、対話しつづけてくれた店員のみんなに、この活動を応援してくれた全ての方に。そして、早々に予想を越えていき、揺さぶりつづけ、未知の挑戦へと後押ししてくれた《リビングルーム北本団地》に。精一杯の感謝を。


2015年4月22日
オークランドの一室にて

北澤潤

試供品